カテゴリ: 記事(詩人)

【その1】組曲第Ⅵ曲。 「鐘鳴りぬ」    三好達治聽け鐘鳴りぬ聽けつねならぬ鐘鳴りいでぬかの鐘鳴りぬいざわれはゆかんおもひまうけぬ日の空にひびきわたらふ鐘の音を鶏鳴か五暁かしらずわれはゆかん さあれゆめゆるがせに聽くべからねばわれはゆかん牧人の鞭にしたが ...

三好達治『鳥の歌』の旅もいよいよ大詰め。「鷲」  三好達治 ああこのきらら雲高き日を越路より信濃のかたへ鷲一羽飛びゆくを見る高く小さくああなほ高く小さくひとり雄々しくかがやきて眞一文字に飛びゆくを見るかくして一羽の鷲は路上に疲れかなしめる者世に老いし者と ...

「鴉」  三好達治 靜かな村の街道を筧が横に越えてゐるそれに一羽の鴉がとまつて木洩れ陽の中に空を仰ぎ 地を眺め私がその下を通るときある微妙な均衡の上に翼を戢めて 秤のやうに搖れてゐた(『南窗集』椎の木社/1932年)鴉(からす)は冬の季語。鳶と鴉はライバルで、 ...

「鳶なく」   三好達治日暮におそく時雨うつ窓はや暗きに何のこころか半霄に鳶啼くその聲するどくしはがれ三度かなしげに啼きて盤桓す波浪いよいよ聲たかく一日すでに暮れたりああ地上は安息のかげふかく昏きにひとり羽うち叫ぶこゑわが屋上を遠く飛び去るを聽く(『故郷 ...

曲集も中盤、三曲目。「夏の祭」   三好達治 夏の祭りの海の上祭の樂は雲の間に天使たちがそそくさとしだらに脱いだ白い沓鷗の群れはむきむきに沖べの巖に動かない彼らの仲間も陽に醉つてしばしは天上の夢を見る夏の祭りの海の上祭の樂は雲の間に(『砂の砦』臼井書房/19 ...

「百舌(もず)」   三好達治槻(つき)の梢に ひとつ時默つてゐた分別顏な春の百舌曇り空を高だかとやがて斜めに川を越えた紺屋の前の榛(はん)の木へ……ああその今の私に欲しいのは小鳥の愛らしい 一つの決心(『閒花集』四季社、1934年)百舌は秋の季語。秋は別れの ...

「鶯(うぐいす)」         三好達治「籠の中にも季節は移る 私は歌ふ 私は歌ふ    私は憐れな楚囚(そしう) この虜はれが 私の歌をこんなにも美しいものにする 私は歌ふ 私は歌ふ    やがて私の心を費ひ果して 私の歌も終るだらう 私は眼を瞑る 翼を ...

無理言って練習に参加させていただいてオンステさせていただいた。男声合唱団タダタケを歌う会コンサート第伍。20161015。於 石橋メモリアルホール。 男声合唱団タダタケを歌う会 コンサート第伍の概要はこちら(演奏会は終了しました。念のため。)無事に終了しました。ほ ...

いよいよ男声合唱団タダタケを歌う会コンサート「第伍」が10/15(土)に迫ってきた。本番までの約20日間、練習に打ち込み、歌に身をゆだねるために「熟成期間」という名の本ブログ更新停止期間に突入し、ブログ更新の誘惑を絶ちます。ちなみに酒は断ちません(笑)。【 ...

「追羽根」   中勘助五月の病気このかた引籠つてた姉もこの頃は不自由ながら家のなかの用が足せるやうになつた。で、いよいよ足ならしに外へ出ることになり、第一日は筋向ふのお稲荷さんへお詣りと話がきまつた。姉は附添ひに□□さんをつれて出かけた。すぐ戻るといつた ...

譜面は買えてもなかなか演奏を耳にする機会がない多田武彦の組曲がある。『追憶の窓』である。1曲目「村」。2曲目「村」。妻「どっちよ。」打ち間違いではないのである。三好達治詩集でも「村」「春」「村」と連続して掲載されている。今回はその2つめ(組曲でも2曲目)の「 ...

多田武彦作品の中でも屈指の名曲といっても許されるだろうこの曲。組曲第1曲「冬野」。 詩の始まりの部分に高く冬の天に輝く星がでてくる。そんな印象的な星にまつわるアナザーストーリー。「天狼星(シリウス)に」   さだまさし自分だけはだませなくて独り夜汽車で旅立 ...

目下絶賛練習中です。多田武彦「ソネット集」。その中で頭をはなれないこの曲。「旅人の夜の歌」 FRAULEIN A. MUROHU GEWIDMET   立原道造降りすさんむでゐるのは つめたい雨。私の手にした提灯はやうやく昏く足もとをてらしてゐる、歩けば歩けば夜は限りなくとほい。私 ...

まずは達治。「郷愁」    三好達治 蝶のやうな私の郷愁!……。蝶はいくつか籬(まがき)を越え、午後の街角に海を見る……。私は壁に海を聽く……。私は本を閉ぢる。私は壁に凭れる。隣りの部屋で二時が打つ。「海、遠い海よ! と私は紙にしたためる。――海よ、僕ら ...

「汽車の歌」   立原道造上り列車は三日月ぐらゐの小さな明りを一列につないであれはくたびれた足どりを一しやう懸命だつたそのあと暗くなつてから下りはキラキラと走つてしまつた上りの息は僕たちをすこしだけかなしく心配にした あの小刻みな喘ぎ(「立原道造全集第二 ...

「揚げ雲雀」        三好達治雲雀の井戸は天にある……あれあれあんなに雲雀はいそいそと水を汲みに舞ひ上る杳かに澄んだ靑空のあちらこちらにおきき井戸の樞(くるる)がなつてゐる『閒花集』四季社/1934年一点鐘。詩集『閒花集』は1934年7月に刊行。莫逆の友梶井基 ...

立原道造の世界。独断のそしりをうけることを覚悟しつつ素人なりの感覚で受け止めると、「SEEK&SEEK&SEEK」「風の中の果てなきこがれ」の詩人なのだなあと感じている。多田武彦「ソネット集」を歌い始めて、改めて思った。筆者の立原道造の詩の合唱曲との出会 ...

いちど本ブログでも書いていますが別の切り口で。「そうか、きみはただただただたけだけだっけ?その弐」 本ブログを書くきっかけとなった多田武彦『わがふるき日のうた』の終曲。「雪はふる」   三好達治海にもゆかな野にゆかなかへるべもなき身となりぬすぎこし方なかへ ...

いよいよである。またまたいよいよの登場である。所用があって関西方面にでかける用事ができたのである。しかも家族でUSJ。娘の卒業旅行積み立ては夫1娘1の2人分だったが急きょ妻も参加できることになり「サンライズ出雲」は即刻却下され。3人が楽しめる行き先になった ...

「視線」よりも「まなざし」という言葉が好きだ。十代は混声合唱組曲『季節へのまなざし』に出逢い、夢中になった。二十代は男声合唱組曲『やさしい魚』に出逢い、夢中になった。特に三曲目「天使」。♪まなざしだけがみえるめのかたちでなく~。のうた。♭7つのCes-Durとい ...

①「愛、深き淵より ―筆をくわえて綴った生命の記録―」星野富弘/立風書房/1981年1月 ②「風の旅」星野富弘/立風書房/1982年1月 実家にあって昔読んだ①。両親が大好きで大事にとってあった。学生の頃、かの有名な男声合唱組曲「花に寄せて」を歌う際に、購入し今も大事に ...

組曲の1曲め。「父が庭にいる歌」    津村信夫 父を喪つた冬があの冬の寒さがまた 私に還つてくる父の書齋を片づけて大きな寫眞を飾つた兄と二人で父の遺物を洋服を分けあつたがポケツトの紛悦(ハンカチ)はそのまゝにして置いた在りし日好んで植ゑた椿の幾株があへな ...

所属する男声合唱団の演奏会でさだまさし「案山子」を歌う機会に恵まれた。「案山子」   さだまさし元気でいるか 街には慣れたか友達できたか寂しかないか お金はあるか今度いつ帰る城跡から見下ろせば 蒼く細い河橋のたもとに造り酒屋のレンガ煙突この街を綿菓子に 染め ...

鎌倉文学館の朔太郎展「マボロシヲミルヒト」を堪能してから、新宿までの所用まで4時間余り。さて、どうしたものか。自然と足は(電車は)世田谷に向かっていた。朔太郎が1933年に移り住んだ世田谷区代田。鉄塔の近くに自らの設計による家を建て、住んでいたという。都会の空 ...

三好達治は京都にあった第三高等学校時代にニーチェ、ショーペンハウエルツルゲーネフを読み、萩原朔太郎「月に吠える」に傾倒してからは、室生犀星、堀口大學も読んだとのこと。傾倒すればおのずとその詩作に影響がでるのも当然のこと。室生犀星「春の寺」の本歌取り三好達 ...

我が家では、まだまだ回文が流行っている。小学生相手の言葉遊びには有効かなと思っているので、よしとしたい。今日は休日出勤の振り替えで仕事が休みだから仕事のことを忘れてぱーっと男声合唱を聴こうか。父「言うほどに、敵があがきて  二度包囲。」父「血眼な街。」父 ...

我が家で瞬間、回文が流行ったことがある。父「相談とはとんだ嘘。」娘「そうだんとはとんだうそ。  ほんとだ!」父「まだ恋し仲は遠のきて、  消えた言葉と答え、  汽笛の音は哀しいこだま。」娘「(略)すごーい!」妻「どこで仕入れたんだその回文。」父「いや、た ...

上野の東京文化会館4F音楽資料室に通い詰めてはや1年あまり。http://www.t-bunka.jp/library/ そこにしげしげとかよいつめるおっさんがおる。男声合唱(9割が多田武彦)のCDとLPをむさぼるように視聴するあやしいおっさん。しかも視聴し終わったら、兎のような真っ赤な眼を ...

本ブログの別の記事で、書いたことの補足。 室生犀星の『青き魚を釣る人』の「春の寺」(1923年/)の意識的な「本歌取り」だと 指摘したのは大岡信と書いた。「本歌取り」についは学研全訳古語辞典、などを引いてみると「本歌取り」和歌・連歌(れんが)の表現技法の一つ。 ...

大きな声で言うまでもないが大学生の本分は学問である。筆者も大学三回生の後半ともなれば大学図書館に入り浸ったものである。父「ま、視聴覚コーナーに入り浸って  男声合唱のLPを聴きまくった  だけでしたけどね。」妻「へー、勉強熱心だったんだね・・・。  って ...

筆者が所属する男声合唱団の不動のベース、人生の大先輩I氏の再登場である。先日いただいた音源に『在りし日の歌』も収録されていた。ありがとうございます。噂はきいていたが、音楽を聴くのは初めてだ。一聴して、叫んだ。なんという曲集だ!!すぐに楽譜を買い求め二度見 ...

大学の男声合唱団の中で、間違いなく名実ともにトップクラスの団体がある。慶應義塾ワグネル・ソサイエティ男声合唱団である。その伝説の指揮者であり音楽家であられた畑中良輔先生の話。筆者の手元に東芝EMIの合唱名曲コレクション『柳河風俗詩』というCDがある。収録 ...

第1部中也が書いた「月」の違った風景の詩。「湖上」  中原中也ポッカリ月が出ましたら、舟を浮べて出掛けませう。波はヒタヒタ打つでせう、風も少しはあるでせう。沖に出たらば暗いでせう、櫂(かい)から滴垂(したた)る水の音は昵懇(ちか)しいものに聞こえませう、― ...

「月の光 その一」    中原中也月の光が照つてゐた月の光が照つてゐたお庭の隅の草叢に隠れてゐるのは死んだ兒だ月の光が照つてゐた月の光が照つてゐたおや、チルシスとアマントが芝生の上に出て來てるギタアを持つては来てゐるがおつぽり出してあるばかり月の光が照つて ...

昨年の話で恐縮だが、2015年6月28日(日)於 すみだトリフォニーホール第64回東西四大学合唱演奏会を家族3人で鑑賞した。私自身も久しぶりの四連の鑑賞であった。各団の人数も持ち直し、安定多数(?)になり、それぞれが素晴らしいステージであった。そして、メインの合同 ...

また帰ってくる。達治に帰ってくる。多田武彦<公認サイト>よりhttp://www.ric.hi-ho.ne.jp/neo-rkato/yaro/20140208tadatake_ryakureki.html 多田武彦は、映画監督を目指していたことも周知の事実である。だからだろうか多田武彦の作品には、映像のイメージが浮かんでくる ...

読み疲れた時に、 ほっと一息の時間。人は誰でも思い間違いや、空耳タイム、想像力がたくましすぎる瞬間がある。今回はそんな話。第1話本の題名を覚えるのは以外と大変。 昨年三好達治の足跡を訪ねに福井に行ったときのこと。福井県立図書館は三国文学、三好達治コーナーの ...

アンコールピースとして登山家の愛好歌としてこよなく愛されるこの曲について。「雨後」  三好達治一つ また一つ雲は山を離れ夕暮れの空に浮かぶ雨の後山は新緑の襟を正し膝を交えて並んでゐる峡の奥 杉の林に発電所の燈がともるさうして後ろを顧みれば雲の切れ目に 鹿島槍 ...

「雨」  八木重吉雨のおとがきこえる雨がふっていたのだあのおとのようにそっと世のためにはたらいていよう雨があがるようにしずかに死んでゆこう(『日本の詩 八木重吉』ほるぷ出版/1975年2月)この本にまとまった形で「秋の瞳」はじめ八木重吉の詩が収められている。序 ...

読み疲れた時に、 ほっと一息の時間。音楽と鉄道の深い関係について。何を隠そう、いや別に隠していないが筆者は鉄道が好きである。鉄道好きにもいろいろあり、まず自身のポジションを宣言しておきたい。夫「●R在来線特急派  進行方向左側着席主義」娘「何の呪文?」夫「 ...

選べない。では話が進まないので2016/03/03/18:32時点でとお断りさせていただきたい。では第3位。男声合唱組曲『蛙・第二』最近、所属する男声合唱団の不動のベース、人生の大先輩I氏より音源をいただいた。ありがとうございます。すごい。1曲目のエンディングなどは、プロ ...

最後、バーン!と大団円で終わる大迫力の曲集ももちろん大好き。また、しみじみと幕をとじる曲集ももちろん大好き。『海に寄せる歌』の終曲。様々な海の風景、物語が6曲れた展開されたあと、穏やかな海の風景がひろがる。「ある橋上にて」   三好達治 十日くもりてひと日 ...

泣けて泣けて・・・・。そんな短いけれども名曲のはなし。「八月のあひびき」   北原白秋八月の傾斜面に、美くしき金の光はすすり泣けり。こほろぎもすすりなけり。雑草の緑とともにすすり泣けり。わがこころの傾斜面に、滑りつつ君のうれひはすすり泣けり。よろこびもす ...

いつもお世話になっています多田武彦データべース によると、作曲順に『雪と花火』(北原白秋)1957年『雪明りの路』(伊藤整)1960年『東京景物詩』(北原白秋)1991年となっている。今日はそれを踏まえた物語。筆者は、『雪明りの路』を20代前半『東京景物詩』を20代半ばと ...

読み疲れた時に、 ほっと一息の時間。 父「最近の国語の 宿題は誰な?」 娘「草野心平。 なんかかえるの詩だよ。」 父「けるるんくっく、とか いようぼくだよ、やせがへるだよ、 とかかい、いいねえ。 娘は他にはなにか知ってる詩は ...

ドラマチックな詩とメロディーで満天の星空の下、大声で何かを叫びたくなる歌がある。ひとりなり。ひとりなり。「若しもかの星に」   百田宗治 もしもかの星に、 夜の空の遠い一つの星のなかに、 取残された一人の人間が居るならば、そしてもし彼がそこから吾々のこの世 ...

男声合唱組曲『雪と花火』『柳河風俗詩』からの通奏低音がずっと鳴っていると以前別の記事で書いた。その続き。長岡の花火を媒体として江戸の街に響きわたる。2015年8月初頭、義妹家族を訪ねて、新潟の長岡大花火大会を有料の桟敷席で鑑賞した。この花火大会は、1945年8月1日 ...

練習曲として、多田武彦の男声合唱組曲『ソネット集・二』から「夢みたものは…」を歌ったことがある。「夢みたものは…」    立原道造夢みたものは ひとつの幸福ねがつたものは ひとつの愛山なみのあちらにも しづかな村がある明るい日曜日の 青い空がある日傘をさ ...

いうまでもないが、男声合唱に親しむ者にとって一度は通る関門ではないだろうか。先人の様々な解釈や名演奏も多々あるので、もう語る余地はないかもしれぬが、自分なりの体験や参考資料を書き留めておきたい。特に多田武彦伝説のはじまり、第1曲目の「柳河」について。「柳河 ...

多田武彦作曲「わがふるき日のうた」の中の詩。三好達治の詩の中でももっとも有名なもののひとつで高校の国語の教科書にも頻出の詩、第1曲目「甃(いし)のうへ」にまつわる7つのポイント。(大学受験には出そうもないですが。)「甃のうへ」    三好達治あはれ花びらな ...

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