室生犀星といえば、北原白秋の弟子にして三好達治のよき好敵手ともいえる偉大な詩人であり、作家である。この室生犀星の詩群の中から作曲されたのが男声合唱組曲『抒情小曲集』である。いつもお世話になっております多田武彦〔タダタケ〕データベースによると以下の7曲構成に ...
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中原中也『中原中也の詩から』の中の「汚れつちまつた悲しみに」のこと
さて、中原中也である。組曲2曲めである。「汚れつちまつた悲しみに……」 中原中也汚れつちまつた悲しみに……汚れつちまつた悲しみに今日も小雪の降りかかる汚れつちまつた悲しみに今日も風さへ吹きすぎる汚れつちまつた悲しみはたとへば狐の革裘汚れつちまつた悲しみ ...
北原白秋『柳河風俗詩』の中の「柳河」のこと
多田武彦の最初の男声合唱組曲は『柳河風俗詩』である。以前拙ブログでも取り上げたことがある。多田武彦の最初の男声合唱組曲『柳河風俗詩』のこと また、北原白秋の没後に観光された写真集では、白秋が生きていた時代の柳河の風景を知ることができる。国立国会図書館デジタ ...
『草野心平の詩から・第二』の中の「オホーツク」のこと
長い旅路の果てに感動的な結末が待っている。というような表現がぴったりの壮大な組曲のひとつ。それが『草野心平の詩から・第二』(全10曲)である。その終曲。「オホーツク」 草野心平ラウス連山の班雪は鈍く光り連山はかすんでオホーツクの中に消える鉛の海は波もな ...
詩人の文学館や記念館などの段
多田武彦が作曲した詩人についてもっと知ってみたい、他の作品にもふれてみたいと思ったときに、文学館や記念館にいってみることも楽しいかもしれない。また、いろいろ調べるときに役立つかもしれない参考機関や書籍もふくめたなんちゃってリンク集。北原白秋(1885-1942)北 ...
タダタケの原体験その弐~詩集のことなど~
男声合唱界隈では知る人ぞ知るサイト多田武彦〔タダタケ〕データベースが実に面白い。このサイトを訪れる度に新たな発見があるのが嬉しい。さて、このサイトには楽譜一覧のページがあるが、その中でも特に思い出深い楽譜がある。多田武彦 男声合唱組曲(3)この曲集には、 ...
中原中也『在りし日の歌』の中の「また来ん春」のことその弐
出張や旅で日本各地に行くとき、見知らぬ土地で図書館に行くのが好きである。どの図書館に行っても、まず目指すのはいわゆる日本十進分類法の911の棚「日本文学の詩歌」である。日本十進分類法(NDC)についてはこちら(日本図書協会のHP)。どこの図書館でも必ずあるこ ...
『木下杢太郎の詩から』の中の「両国」のこと
最近、お疲れモードのせいか、骨太なタダタケ節が無性に聴きたくなる。骨太だけでなく繊細なタダタケ節といえば最近のお気に入りは『木下杢太郎の詩から』である。ネット上で聴ける好きな音源として演奏の新しい順に早稲田大学グリークラブ2016年の演奏関西大学グリークラブ1 ...
詩の友を見送った人、堀口大學
多田武彦が作曲した詩人たちの中で早くに頭角を現し、他の詩人たちの覚醒を促したのが堀口大學(1892年-1981年)である。90年近く生きた彼の生涯は、沢山の詩の友を見送ってきた生涯でもあった。多田武彦が作曲した詩人たちをざっくり知るために 堀口大學が1971年に筑摩書房 ...
津村信夫『父のいる庭』の中の「紀の国」のこと
組曲の3曲目「早春」の記事からだいぶ間があいてしまったが津村信夫『父のいる庭』の中の「早春のこと」 さて、終曲である。筆者にとっては、思い出深いこの曲。1998年に『三崎のうた・第二』をとある東京の男声合唱団で歌ってから、しばらく多田武彦の曲から遠ざかっていた ...
多田武彦が作曲した詩人の中で、 己の機が熟していないものたちその弐
新年あけましておめでとうございます。遅々としてすすまぬ拙ブログですが、こつこつと楽しんでまいります。言い訳ではないが筆がすすまなかったことに、例の「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の発効に伴う著作権法改正の施行について」 ...
多田武彦が作曲した詩人の中で、 己の機が熟していないものたち
こつこつと書き溜めてきた拙ブログではあるが、当然のことながら、多田武彦が作曲した詩人は全て網羅できているわけではない。(拙ブログの参考記事)多田武彦が作曲した詩人たちをざっくり知るためにhttp://blog.livedoor.jp/hirolead/archives/47511292.html色々な条件があ ...
立原道造『優しき歌』にみる別の景のこと
1月21日(日)に迫っている当団のコンサート。年末に敢行した自宅単独音確認合宿のおかげで、一筋の光がみえてきた気がする。詳しくは、拙ブログ記事を。 演奏する2つの組曲のうちの多田武彦作曲『優しき歌』は全5曲。どれもみなわが胸をうつ音楽に溢れている。・・・しかし ...
ただタダタケだbar今宵も開店。その拾参
眠れぬ夜にツィッターでつらつら書いたネタのまとめその拾参。随時追加予定。だが時期未定。でも断固追加予定。#21 そろそろソロいってみナイト。多田武彦の組曲を歌っていて、誰しもが「いつかは・・・」と夢見ることを実現できるイベントを仕掛けないと。お店にお客を呼 ...
人はみな旅人である。しかし時には原点に立ち戻る勇気も必要ということ
人はみな旅人である。 気持ちが折れそうなとき、 真夜中に叫びだしそうなとき、 己のルーツに立ち戻りたくなる、そんな瞬間が誰しもあるのではないだろうか。 筆者の場合、 そのルーツを思い出させるものたち。それは東京は上野の 東京文化会館にある。 拙ブログで取り上げ ...
立原道造『優しき歌』の中の 「みまかれる美しきひとに」のことの補足
「みまかれる美しきひとに」 立原道造まなかひに幾たびか立ちもとほつたかげはうつし世に まぼろしとなつて忘れられた見知らぬ土地に 林檎の花のにほふ頃見おぼえのない とほい星夜の星空の下で、その空に夏と春の交代が慌しくはなかつたか。――嘗てあなたのほほゑ ...
こりない男の「企画展『水魚の交わり~犀星・朔太郎の交友~』田端文士村記念館」来訪記
妻「たまの休みだというのに、 あんた、今どこでなにしとるんじゃ!」父「寸暇バカンス。 @田端」妻「あんた、前回(こりない男の「前橋文学館と萩原朔太郎記念館」来訪記)で 反省してなかったんか!」父「最近、詩人のインプットが 弱かったんで・・ ...
三好達治『鳥の歌』の中の「百舌」のこと
「百舌(もず)」 三好達治槻(つき)の梢に ひとつ時默つてゐた分別顏な春の百舌曇り空を高だかとやがて斜めに川を越えた紺屋の前の榛(はん)の木へ……ああその今の私に欲しいのは小鳥の愛らしい 一つの決心(『閒花集』四季社、1934年)百舌は秋の季語。秋は別れの ...
三好達治『鳥の歌』の中の「鶯」のこと
「鶯(うぐいす)」 三好達治「籠の中にも季節は移る 私は歌ふ 私は歌ふ 私は憐れな楚囚(そしう) この虜はれが 私の歌をこんなにも美しいものにする 私は歌ふ 私は歌ふ やがて私の心を費ひ果して 私の歌も終るだらう 私は眼を瞑る 翼を ...
三好達治『追憶の窓』の中の「村」のこと
譜面は買えてもなかなか演奏を耳にする機会がない多田武彦の組曲がある。『追憶の窓』である。1曲目「村」。2曲目「村」。妻「どっちよ。」打ち間違いではないのである。三好達治詩集でも「村」「春」「村」と連続して掲載されている。今回はその2つめ(組曲でも2曲目)の「 ...
こりない男の「前橋文学館と萩原朔太郎記念館」来訪記
妻「たまの休みだというのに、 あんた、今どこでなにしとるんじゃ!」父「朔太郎の故郷におります。父。」娘「うどん店におります。マリオ(任天堂)。」父「おーそれ、有名な回文ではないか。 まだ回文ブーム 終わってなかったんかいな。」娘「釧路より、 ...
立原道造と鉄道との想い出「汽車の歌」のこと
「汽車の歌」 立原道造上り列車は三日月ぐらゐの小さな明りを一列につないであれはくたびれた足どりを一しやう懸命だつたそのあと暗くなつてから下りはキラキラと走つてしまつた上りの息は僕たちをすこしだけかなしく心配にした あの小刻みな喘ぎ(「立原道造全集第二 ...
娘葉子と父朔太郎の想い出と
いよいよあと7日間で企画展が終わってしまう。鎌倉文学館特別展「マボロシヲミルヒト」以前本ブログでも紹介した萩原朔太郎。白秋につづく詩の巨人として、その存在感は多大なものがあるだろう。娘萩原葉子がしるした「父・萩原朔太郎」(1979年中央公論社)を読んだ。その中 ...
鎌倉文学館特別展「マボロシヲミルヒト」~萩原朔太郎~
いよいよである。GWを返上してこつこつ働いたおかげで平日に休みが取れたのである。いよいよである。そんな訳で先週末噂の企画展に馳せ参じたのである。神奈川県藤沢駅から江ノ電に乗って由比ヶ浜下車。途中、コバルトブルーの湘南の海を眺めながら三好達治と丸山薫の友情 ...
三好達治『追憶の窓』の中の「昨日はどこにもありません」の補足
三好達治は京都にあった第三高等学校時代にニーチェ、ショーペンハウエルツルゲーネフを読み、萩原朔太郎「月に吠える」に傾倒してからは、室生犀星、堀口大學も読んだとのこと。傾倒すればおのずとその詩作に影響がでるのも当然のこと。室生犀星「春の寺」の本歌取り三好達 ...
中原中也『在りし日の歌』の中の「また来ん春」のこと
筆者が所属する男声合唱団の不動のベース、人生の大先輩I氏の再登場である。先日いただいた音源に『在りし日の歌』も収録されていた。ありがとうございます。噂はきいていたが、音楽を聴くのは初めてだ。一聴して、叫んだ。なんという曲集だ!!すぐに楽譜を買い求め二度見 ...
中原中也『中原中也の詩から』の中の「月の光」のことその弐
第1部中也が書いた「月」の違った風景の詩。「湖上」 中原中也ポッカリ月が出ましたら、舟を浮べて出掛けませう。波はヒタヒタ打つでせう、風も少しはあるでせう。沖に出たらば暗いでせう、櫂(かい)から滴垂(したた)る水の音は昵懇(ちか)しいものに聞こえませう、― ...
三好達治『追憶の窓』の中の「雨後」のこと
アンコールピースとして登山家の愛好歌としてこよなく愛されるこの曲について。「雨後」 三好達治一つ また一つ雲は山を離れ夕暮れの空に浮かぶ雨の後山は新緑の襟を正し膝を交えて並んでゐる峡の奥 杉の林に発電所の燈がともるさうして後ろを顧みれば雲の切れ目に 鹿島槍 ...
幕間その玖 「鉄道と萩原朔太郎」の段
読み疲れた時に、 ほっと一息の時間。本ブログに寄せられたコメントにお答えして。「撮り鉄」ではなく「乗り鉄」である。写真はほぼ零。それがいい。それでいい。さて、全国各地に群山あれどとりよろふ天の香久山・・・。ではなくて「●●富士」であるが筆者の思出があるのは ...
男声合唱そして多田武彦作品との初めての邂逅
仰々しく書き出したがいかに多田武彦にはまっていったのかを記録に残しておきたい。以下物語風に。序あれは大学三年の混声合唱団テノールパトリ時代のこと。第1部高校時代を80人規模の混声合唱団で過ごした筆者。楽しかったが、コンクールで競い合った高校男声合唱団が沢山 ...
そうか、きみはただただただたけだけだったっけ?その弐。三好達治『わがふるき日のうた』のこと
そうか、きみはただただただたけだけだったっけ?その壱のつづき。 ●できれば、演奏の際にはここで少しでも「間」をあけてほしいですね。ハンカチで汗をぬぐうだけで、涙を拭いたと同じ効果があると思いませんか。聴衆も張りつめた息をはく「間」になりますね。「雪はふる」 ...
そうか、きみはただただただたけだけだったっけ?その壱。三好達治『わがふるき日のうた』のこと
僕の男声合唱人生の中で、胸を打つ物語が、歌詞として取り上げられた近代詩の中にある。うたをうたうことの原点となるこれらのものは、つたなき僕の人生の中で、何度も僕の人生を救った。そしてこれからも救うだろう。今回Kさんという稀有な資質をもつ歌い手に触発され、「三 ...