筆者が所属している
男声合唱団タダタケを歌う会で
初秋のイベントに出場する。
そのイベントの名は、
『言の葉をめぐる旅2024 アカペラ合唱祭in大田区民プラザ』
である。
主催者のページはこちら。
主催者のXはこちら。
演奏曲目は以下の4曲。
演奏時間が20分と長いこともあって、
かなり力のこもった選曲となった。
夫「・・・ウム。なかなか歌いがいのある曲になったな」
妻「MLBのホームラン競争みたいな?」
夫「いや、これはもはやT-DASだな。」
妻「東京の水天宮前にある観光拠点のことか?」
夫「それはT-CAT。
これはもはやタダ(TD)タケオール(A)スターズ(S)だわ。」
妻「・・・自宅練習が捗っていないようだが。」
それはさておき、
4曲ともタダタケ界隈では
有名な曲ばかりである。
腕(喉)がなるのである。
4曲を通じて詩と曲に、
別離と決意、旅立ちの思いが
満ち満ちていると感じる。
これまでに拙ブログで取り上げた記事はこちら。
味わうポイント
・木下杢太郎が、世界に飛び出そうと決意した瞬間が感じられる。
初出の『食後の唄』/1919年では、
最期の1行が
なぜか心のこがるる。
になっていた。
作曲の詩のもとになったのは、『木下杢太郎詩集』/第一書房/1930年のようだ。
このうち、前半部と後半部の最後の一文が
韻を踏んでいるように思える。
(初出)
・牡丹を染めた袢纏の蝶蝶が波にもまるる。
・なぜか心のこがるる。
(曲のテキスト)
・牡丹を染めた袢纏の蝶蝶が波にもまるる。
・なぜか心のみだるる。
こがるる→みだるる。
こがるるだと、
故郷伊東への望郷の思いというニュアンスが
強くなってしまうかもしれない。
世界へと視点を拡げていくぞという決意を表すために
激しくこころを揺さぶられた、というニュアンスを
詩人は出したかったのではないか。
・「遠く飛ぶ鳥の」は「明日香(あすか)」の枕詞。
・灘の美酒を盃に注ぎて夕日にかざす。
遠く東京まで運ばれてきてもなお
香りを失っていないという物流の奇跡。
東京という様々な文化の集結する地点。
・かざした腕の支点(ひじ)には杢太郎の故郷伊東。
・味わう杢太郎の身体は東京の両国。
2.「春愁」
こちらのHPが大変参考になります。
※大人の都合により詩は省略。
味わうポイント
・テナーソロが切々と歌い上げる前半部(A)と青春の蹉跌を振り返る中間部(B)。
そして再び前半部の境地にいたる後半部(A’)。
・季節は巡る。春はふたたび始まる。
春が訪れる。春が来る。ではないニュアンスがいい。
・後半部は前半部と同じ曲想だが、後半部はもはやイノセントではいられない。
しかし、春がはじまるように様々な艱難辛苦を乗り越えた私も生きていきたい。
その証拠にAではテナーソロとバックコーラスのハミングだったのが、
A’ではトップテナーがテナーソロのメロディを歌うところの他の3パートがハモってくる。
詩人の魂が森羅万象の中で再生の道を歩み始める許しを得られたかのように。
まるで、無情の世界が有情の世界に変わったかのように思えて、
泣けてなけて仕方がないのである。
3.「Enfance finie(過ぎ去りし幼年時代)」
味わうポイント
・バリトンソロの際のコーラス隊は波の音に聞こえる。
・海の波が高くなる時は、風が強く吹いているということ。
・詩の中には風は出てこないが、作曲家の曲想で
見事に表現されている。
・三好達治は名詞の複数形を使用しないこだわりがあったということ。
そうすると約束はみんな壊れたね。の
ニュアンスをどうとらえるかに演奏者の楽しみがあるね。
空には階段があるね。
味わうポイント
・中間部にテナー系が現実の風景を歌い、
ベース系が詩人の夢うつつの世界を歌う、
その対比が面白い。
・その2つの旋律が合わさって、
紀の国にたどり着いた喜びを歌う展開が
なかなかに泣けそうになる。
・後半部の父逝いて今日の日も想ふ
に突っ込んでいく瞬間の間。
名作「となりのトトロ」でメイちゃんがトトロに出会う
草のトンネルを抜けた瞬間を思い出す。
9月は流行り病にかかり、
わっさわっさしていたので練習不足。
ちょっと反省。
残り少ない時間、一生懸命練習していい演奏をしたい。
男声合唱団タダタケを歌う会で
初秋のイベントに出場する。
そのイベントの名は、
『言の葉をめぐる旅2024 アカペラ合唱祭in大田区民プラザ』
である。
主催者のページはこちら。
主催者のXはこちら。
2024年10月14日(月)
13:30 開演(13:00開場)
15:53 演奏(予定)
演奏曲目は以下の4曲。
1.男声合唱組曲『木下杢太郎の詩から』より
「両国」
2.男声合唱組曲『尾崎喜八の詩から』より
「春愁」
3.男声合唱組曲『わがふるき日のうた』より
「Enfance finie(過ぎ去りし幼年時代)」
4.男声合唱組曲『父のいる庭』より
「紀の国」
演奏時間が20分と長いこともあって、
かなり力のこもった選曲となった。
夫「・・・ウム。なかなか歌いがいのある曲になったな」
妻「MLBのホームラン競争みたいな?」
夫「いや、これはもはやT-DASだな。」
妻「東京の水天宮前にある観光拠点のことか?」
夫「それはT-CAT。
これはもはやタダ(TD)タケオール(A)スターズ(S)だわ。」
妻「・・・自宅練習が捗っていないようだが。」
それはさておき、
4曲ともタダタケ界隈では
有名な曲ばかりである。
腕(喉)がなるのである。
4曲を通じて詩と曲に、
別離と決意、旅立ちの思いが
満ち満ちていると感じる。
これまでに拙ブログで取り上げた記事はこちら。
1.「両国」
「両国」
木下杢太郎
兩國の橋の下へかかりや
大船は檣を倒すよ、
やあれそれ船頭が懸聲をするよ。
五月五日のしつとりと
肌に冷き河の風、
四ツ目から來る早船の緩かな艪拍子や、
牡丹を染めた袢纏の蝶蝶が波にもまるる。
灘の美酒、菊正宗、
薄玻璃の杯へなつかしい香を盛つて
西洋料理舗の二階から
ぼんやりとした入日空、
夢の國技館の圓屋根こえて
遠く飛ぶ鳥の、夕鳥の影を見れば
なぜか心のみだるる。
(『食後の唄』/アララギ発行所/1919年)
味わうポイント
・木下杢太郎が、世界に飛び出そうと決意した瞬間が感じられる。
初出の『食後の唄』/1919年では、
最期の1行が
なぜか心のこがるる。
になっていた。
作曲の詩のもとになったのは、『木下杢太郎詩集』/第一書房/1930年のようだ。
大胆に曲の構成から考えると。
3部構成になっていると思う。
【前半部】
兩國の橋の下へかかりや
3部構成になっていると思う。
【前半部】
兩國の橋の下へかかりや
大船は檣を倒すよ、
やあれそれ船頭が懸聲をするよ。
五月五日のしつとりと
肌に冷き河の風、
四ツ目から來る早船の緩かな艪拍子や、
牡丹を染めた袢纏の蝶蝶が波にもまるる。
【中間部】
灘の美酒、菊正宗、
薄玻璃の杯へなつかしい香を盛つて
西洋料理舗の二階から
ぼんやりとした入日空、
【後半部】
夢の國技館の圓屋根こえて
夢の國技館の圓屋根こえて
遠く飛ぶ鳥の、夕鳥の影を見れば
なぜか心のみだるる。
このうち、前半部と後半部の最後の一文が
韻を踏んでいるように思える。
(初出)
・牡丹を染めた袢纏の蝶蝶が波にもまるる。
・なぜか心のこがるる。
(曲のテキスト)
・牡丹を染めた袢纏の蝶蝶が波にもまるる。
・なぜか心のみだるる。
こがるる→みだるる。
こがるるだと、
故郷伊東への望郷の思いというニュアンスが
強くなってしまうかもしれない。
世界へと視点を拡げていくぞという決意を表すために
激しくこころを揺さぶられた、というニュアンスを
詩人は出したかったのではないか。
・「遠く飛ぶ鳥の」は「明日香(あすか)」の枕詞。
・灘の美酒を盃に注ぎて夕日にかざす。
遠く東京まで運ばれてきてもなお
香りを失っていないという物流の奇跡。
東京という様々な文化の集結する地点。
・かざした腕の支点(ひじ)には杢太郎の故郷伊東。
・味わう杢太郎の身体は東京の両国。
・そして眼にうつる入日空には飛ぶ鳥の「明日香」、
・君はコスモを感じるか?(車田正美先生すみません)
・お酒を飲まなくても詩と曲に酔いますわ。ホント。・君はコスモを感じるか?(車田正美先生すみません)
2.「春愁」
こちらのHPが大変参考になります。
※大人の都合により詩は省略。
味わうポイント
・テナーソロが切々と歌い上げる前半部(A)と青春の蹉跌を振り返る中間部(B)。
そして再び前半部の境地にいたる後半部(A’)。
・季節は巡る。春はふたたび始まる。
春が訪れる。春が来る。ではないニュアンスがいい。
・後半部は前半部と同じ曲想だが、後半部はもはやイノセントではいられない。
しかし、春がはじまるように様々な艱難辛苦を乗り越えた私も生きていきたい。
その証拠にAではテナーソロとバックコーラスのハミングだったのが、
A’ではトップテナーがテナーソロのメロディを歌うところの他の3パートがハモってくる。
詩人の魂が森羅万象の中で再生の道を歩み始める許しを得られたかのように。
まるで、無情の世界が有情の世界に変わったかのように思えて、
泣けてなけて仕方がないのである。
「Enfancefinie
(アンファンス フィニ/過ぎ去りし幼年時代)」
三好達治
海の遠くに島が……、雨に椿の花が堕ちた。
鳥籠に春が、春が鳥のゐない鳥籠に。
約束はみんな壞れたね。
海には雲が、ね、
雲には地球が、映つてゐるね。
空には階段があるね。
今日記憶の旗が落ちて、
大きな川のやうに、私は人と訣れよう。
床に私の足跡が、足跡に微かな塵が……、
ああ哀れな私よ。
僕は、さあ僕よ、僕は遠い旅に出ようね。
(『測量船』/第一書房/1930年)味わうポイント
・バリトンソロの際のコーラス隊は波の音に聞こえる。
・海の波が高くなる時は、風が強く吹いているということ。
・詩の中には風は出てこないが、作曲家の曲想で
見事に表現されている。
・三好達治は名詞の複数形を使用しないこだわりがあったということ。
そうすると約束はみんな壊れたね。の
ニュアンスをどうとらえるかに演奏者の楽しみがあるね。
空には階段があるね。
4.「紀の国」
「紀の国」
津村信夫
「紀の國ぞ
はや 湊につきたり」
舟のをぢ
かたみに呼びかひ
うつとり國
眸疲れて
父に手をひかれし心地
犬の先曳く車もあれば
海の邊に
柑子の實光りて
その枝のたわゝなる下
かいくゞり
かいくゞりてゆく
「紀の國ぞ
あらぶる海の國ぞ
汝が父の生まれし處ぞ」
父逝いて
今日の日も想ふ
幼児の吾兒を抱きて
そが小さき者の
夢にも通へ
あらぶる海の國は
我がためには父の國
汝がためには祖父の國
そが人の御墓かざる
ゆづり葉のみどりの國ぞと
『父のいる庭』(臼井書房、1942)
味わうポイント
・中間部にテナー系が現実の風景を歌い、
ベース系が詩人の夢うつつの世界を歌う、
その対比が面白い。
・その2つの旋律が合わさって、
紀の国にたどり着いた喜びを歌う展開が
なかなかに泣けそうになる。
・後半部の父逝いて今日の日も想ふ
に突っ込んでいく瞬間の間。
名作「となりのトトロ」でメイちゃんがトトロに出会う
草のトンネルを抜けた瞬間を思い出す。
9月は流行り病にかかり、
わっさわっさしていたので練習不足。
ちょっと反省。
残り少ない時間、一生懸命練習していい演奏をしたい。
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