草野心平『富士山』全曲を
歌うことになった。


男声合唱組曲『富士山』
1「作品第壹」(ダイイチ)
2「作品第肆」(ダイシ)
3「作品第拾陸」(ダイジュウロク)
4「作品第拾捌」(ダイジュウハチ)
5「作品第貳拾壹」(ダイニジュウイチ)

男声合唱組曲『富士山』の情報については
こちらのHPが参考になります。

この組曲はタダタケファンなら
誰しもが一度は歌ったことがある。
もしくは一度は客席で演奏を聞いたことがある。

という超有名な組曲である。
そしてスケールの大きな組曲でもある。

さて、絶賛練習中の筆者が
詩の中でどうしても気になる風景がある。
気になって音取りが進まない。

それが組曲第1曲め
「作品第壹」である。


「作品第壹」
   草野心平

麓には桃や桜や杏さき
むらがる花花に蝶は舞ひ
億萬萬の蝶は舞ひ
七色の霞たなびく

  夢みるわたくしの
  富士の祭典

ぐるりいちめん花はさき
ぐるりいちめん蝶は舞ひ
昔からの楽器のすべては鳴り出すのだ
種蒔きのように鳥はあつまり
日本のすべての鳥はあつまり
楽器といっしょに歌っている

  夢みるわたくしの
  富士の祭典

七色の霞は雪に映え
七色の陽炎になってゆらゆらする
鹿や猪や熊や馬
人はゐないか 人もゐるゐる
へうたんの酒や女の舞ひ
標野の人も歌っている
(後略)

「草野心平詩全景」/筑摩書房/1973年

この曲は組曲屈指の難曲と筆者は認識している。
各種先行発売されているCDなどを見ても
古代の日本を幻視している草野心平の視点で
書かれた世界観とみていいと思う。
「標野」の文字が見えることから
万葉の時代だと思われる。


興味深いのは、
この詩、やたらと生物が出てくるなあという
素朴な疑問である。
出現順にいうと、
蝶、鹿、猪、熊、馬、人、女、標野の人、黄鳥
である。
猪鹿蝶は花札でおなじみ。神々の使い。
熊も自然界の荒ぶる神に近いか。
馬。だいぶ人間の世界に近づいてきた。
そして人、女と目線が目前まで降りてきた。
そしてふと気が付くと標野の人。当時のお役人様と
目線が上がり、大陸からやってくる黄鳥に眼をやる。
まさに富士の裾野から点まで意識が駆け上がる。
・・・このあたり

心平の心象が良く現れているかもしれない。

詩も曲も終局にふさわしい
ダイナミックさで
聞くたびに好きになっていく。

おわり。


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