長い旅路の果てに
感動的な結末が待っている。
というような表現がぴったりの
壮大な組曲のひとつ。
それが
『草野心平の詩から・第二』(全10曲)である。
その終曲。



「オホーツク」
   草野心平

ラウス連山の班雪は鈍く光り
連山はかすんでオホーツクの中に消える
鉛の海は波もなく
オホセグロカモメがゆんゆん大きく
たった一ひきとんでゆく
サガレンだらうか根室だらうか
鉛の空をわづかにそのところだけをゆるがし
とんでゆく
ところがどうだ この新鮮
目覚める牧草の緑の浜辺
エゾヒメタンポポやハマナス・ブッシュ
水すまし色の裸の馬
鉛の中に新しい緑のアンダンテ沸く
(後略)

草野心平『天』,新潮社,1951年)


こちらのHPに草野心平が1950年の5月末に

北海道の網走市を訪れたということがわかる。

このときの風景は1955年に出版された

「オホーツク海と日高の海」というエッセイに

書かれたとのこと。

こちらのHPが大変参考になります。
多田武彦〔タダタケ〕データベース

おいしいまち網走【一般社団法人網走観光協会】

網走文学散歩 5.懐かしい網走港と魚市場の風景【網走歴史の会】

網走の海岸から

はるか遠くに見えた

羅臼連山の風景が

心平の心に強烈な印象を

与えたのかもしれない。


5月の網走はまさに春本番。

鉛のような風景から緑の風景に変わる

とてもいい季節。

生命の息吹を感じられる季節といえるかもしれない。

あばしりの四季【網走市HP】


IMG_0081

IMG_0080
網走あたりからのオホーツク海の風景
(2019年に著者が撮影したもの)

鉛の中に新しい緑のアンダンテ沸く

というところに

心平の心象が良く現れている

かもしれない。
詩も曲も終局にふさわしい
ダイナミックさで
聞くたびに好きになっていく。

おわり。


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