最近、お疲れモードのせいか、
骨太なタダタケ節が
無性に聴きたくなる。

骨太だけでなく
繊細なタダタケ節といえば
最近のお気に入りは
『木下杢太郎の詩から』
である。

ネット上で聴ける好きな音源として
演奏の新しい順に

がある。
※個人の感想です。

うむ、じつに骨太でかつ繊細である。

「両国」
  木下杢太郎

兩國の橋の下へかかりや
大船は檣を倒すよ、
やあれそれ船頭が懸聲をするよ。
五月五日のしつとりと
肌に冷き河の風、
四ツ目から來る早船の緩かな艪拍子や、
牡丹を染めた袢纏の蝶蝶が波にもまるる。

灘の美酒、菊正宗、
薄玻璃の杯へなつかしい香を盛つて
西洋料理舗の二階から
ぼんやりとした入日空、
夢の國技館の圓屋根こえて
遠く飛ぶ鳥の、夕鳥の影を見れば
なぜか心のみだるる。
(『食後の唄』/アララギ発行所/1919年)

木下杢太郎といえば、
かの北原白秋と
パンの会(1908年~1911年)を
結成した詩人。
後年『パンの会の回想』(1926年)
などで北原白秋との友情が
かいまみえる。
当時我々は印象派に関する画論や、歴史を好んで読み、
又一方からは、上田敏氏が活動せられた時代で、
その翻訳などからの影響で、
巴里の美術家や詩人などの生活を空想し、
そのまねをして見たかつたのだつた。
 是れと同時に浮世絵などを通じ、
江戸趣味がしきりに我々の心を動かした。
で畢竟パンの会は、江戸情調的異国情調的憧憬の
産物であつたのである。
 当時カフエエらしい家を探すのには難儀した。
東京のどこにもそんな家はなかつた。
(中略)

とに角両国橋手前に一西洋料理屋を探した。
(後略)
木下杢太郎(1926年)『パンの会の回想』
青空文庫12月2日https://www.aozora.gr.jp/cards/000120/files/1394_20691.html
(アクセス日:2020/1/17)
このパンの会が文学や美術の交流により
芸術が生まれるきっかけとなって、
木下杢太郎の『食後の唄』と
北原白秋の『東京景物詩』
になるというのは感慨深い。

同じ時を過ごし、
酒を飲みかわし、
同じ景色を見ていた。

木下杢太郎「両国」
北原白秋「花火」


読み比べ、
聴き比べ、
歌い比べ、
なかなかに興味深い。

個性と個性がぶつかって、
それぞれの「仕事」に昇華される。
そのような交わりを持ちたいものである。