多田武彦作曲の
伊藤整(『雪明りの路』/椎の木社/1926年)
の詩集による『雪明りの路』は
名組曲の誉れ高いと
いっても過言ではないだろう。

多田武彦の詩の選球眼(選詩眼?)の
素晴らしさにはただただ感服するしか
ないが(下記拙ブログのリンク参照)。

多田武彦が作曲した詩人たちをざっくり知るために



ほぼ同時代に生きた三好達治が
伊藤整の『雪明りの路』について
賛辞を贈っている。

「詩集『雪明りの路』」
      三好達治

全文は結構長いので
要約すると。

●君の恋愛には夜鶯がないている。
●吹雪の忍路の村で展開される
 詩にはロマンチシズムに溢れ
 枝移りする夜鶯の羽音が聞こえる。
●ユニックな青白い葩(はな)びらの
 光沢に満ちている。
●チェーホフ的な
 厭世思想と犀利な観察によって
 忘れられがちな些細な出来事の
 美しさを巧みにノートしてくれた。
●彼の詩集は
 的確な写実的な手法が
 ロマンチシズムの採光によって
 温藉(おんしゃ)なリズムを
 奏している優れたものである。
など。
『測量船拾遺』/南北書園/1947年)

国語辞書をなめなめ。

夜鶯(よるうぐいす)とは
小夜啼き鳥(さよなきどり)
または夜啼き鶯のこと。
通っている名は、美しい鳴き声の
ナイチンゲールのこと、とのこと。

夜啼き鳥と称される
偉大な詩人といえば
デュッセルドルフ生まれの
ハインリッヒ・ハイネ
(1797-1856年)。
その魂は夜啼き鶯であり、
美と愛情との
朗々たる使者である、とある。
(『ハイネ詩集』/新潮社/1951年)

・・・なるほど。
素直に受け取れば
伊藤整の詩人としての資質は
チェーホフであり、
その生み出された詩集は
ハイネである、ということか。

最大限の誉め言葉じゃないか。
・・・なるほど。

ハイネ詩集を一読されてから
名組曲『雪明りの路』の世界に
浸ってみるのもよいかもしれない。

追伸
三好達治は
著書『新唐詩選』(岩波書店/1952年)
の中で「景」という言葉を使っている。
筆者もシンメトリーな「景」という言葉が
お気に入りなので、異論なし。

おわり。

にほんブログ村 音楽ブログへ
にほんブログ村