さて、若き詩人立原道造である。
組曲1曲目の「爽やかな五月に」。
筆者は高校、大学と
混声でのびのびと育まれたので(笑)
どうしても小林秀雄の曲を
思い出してしまうが。
ここでの話題は
男声合唱の多田武彦版で
よろしくお願いします。

勿論
どちらも、それぞれの良さがあり
どちらも歌いごたえがあるなあ。

「爽やかな五月に」
   立原道造

月の光のこぼれるやうに おまへの頬に
溢れた 涙の大きな粒が
すぢを曳いたとて
私は どうして それをささへよう!
おまへは 私を だまらせた……

《星よ おまへはかがやかしい
《花よ おまへは美しかつた
《小鳥よ おまへは優しかつた
……私は語つた おまえの耳に 幾たびも

だが たつた一度も 言いはしなかつた
《私は おまへを 愛してゐる と
《おまへは 私を 愛してゐるか と

はじめての薔薇が ひらくやうに
泣きやめた おまえの頬に
笑ひがうかんだとて
私の心を どこにおかう?
(1937から1938年頃の作。
 出版は1947年/角川書店)

立原道造は
長身で
色白でクリクリした
子気味の好い顔立ちの
美青年だったと
室生犀星は回想している。

そして、
顔に似合わぬ
大変立派な声を
していたとのこと。

だからソネット詩に感じる
リズムと描写は
声に出して読み、
歌を歌ってみると
さらに身体に
染み入ってくる。
音に関する表現への
親和性も納得。

この詩では
鳥は優しい。
立原のほかの詩では
鳥は啼く、歌うと
よまれているが。

星や花や小鳥のことを
立原が語ったから?

語った「立原」に対して
言わなかった「おまへ」。

微妙な言い回しだが
そこに何を感じるか。
「おもひ」のベクトルを
感じるか。

念のため薔薇も国語辞典で
調べてみる。
薔薇は6月の誕生花で
季語は夏。
なるほど
先日演奏会で歌った
あの 
「やがて秋が來るだらう・・・」
の前によまれた詩。
という説明も
納得。

『わが愛する詩人の伝記』
(室生犀星/新潮文庫/1966年)
近代詩人のレファレンスブックとして
非常に参考になります。

最近復刊されたので
新品をゲット。
(講談社文芸文庫/2016年)
 
値段は7倍になっています。
時代を感じるね。
(わたしはとほい眼をしてみる)

妻「さて、今日のあんたの
  晩酌はビー●から
  ホッ●ーに変更と・・・」
娘「詩人の気持ちになるっていって
  毎晩毎晩夜が更けると
  お酒を飲んでるね。」
妻「暫く一日一本だけな。」

だけれども たつたそれだけ
昔むかしの 約束はもうのこらない?

妻「立原道造風に言ってもダメ。」
父「・・・ウム。」

おわり。



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