組曲の1曲め。
「父が庭にいる歌」
津村信夫
父を喪つた冬が
あの冬の寒さが
また 私に還つてくる
父の書齋を片づけて
大きな寫眞を飾つた
兄と二人で
父の遺物を
洋服を分けあつたが
ポケツトの紛悦(ハンカチ)は
そのまゝにして置いた
在りし日
好んで植ゑた椿の幾株が
あへなくなつた
心に空虚(うつろ)な部分がある
いつまでも殘つている
そう云つて話す 兄の聲に
私ははつとする程だ
父の聲だ――
そつくり 父の聲が話してゐる
私が驚くと
兄も驚いて 私の顏を見る
木屑と 星と 枯葉を吹く風音がする
暖爐の中でも鳴つてゐる
燈がともる
云ひ合せたやうに
私達兄弟は庭の方に目をやる
(さうだ いつもこの時刻だつた)
あの年の冬の寒さが
今 庭の落葉を靜かに踏んでくる
(『父のいる庭』/臼井書房/1942年)
名曲である。
亡き父を偲ぶと
トップバッターとしても
感慨深いものがある。
特に父を亡くした自分のもののように
実感としてうなずける瞬間がある。
親父が亡くなったとき、
涙にくれる家族の中でひとり
「ひげって、
まだ伸びるもんなんだなあ」
などと意外と冷静に見ている
自分がいた。
まるでまだ生きているかのように。
だから、まだ必要なハンカチは
そのままにしておいた、という
歌詞には同感である。
今思うと、ショックが大きすぎて
涙が出なかったのだと思う。
泣けたのはずいぶん後だったけれど。
父と体型が似ている自分は、
父のスーツやセーターやポロシャツなど
殆どもらって、今でも愛用している。
最近、家族に
ふとしたしぐさや物言いが
父に似てきた、と言われる。
自分でもはっとするほどだ。
いい年齢の親父たちでも
説得力のある演奏ができると思う。
おすすめの組曲である。
さて、亡くなってからも
生き残った人のまわりで
見守っているかもね、
という感覚。
これを思い出す
青春の1曲がある。
「星のシルエット」
岩崎良美
ある時不思議な気持ちを
感じてみたり
自然に結んだリボンがほどけた時は
僕の合図だよ
紅茶のカップに涙が輪を描いたとき
だれかにやさしく
抱かれている気がしたら
僕の合図だよ
ねえ 離れていても
君 守られてるよ
とても強い愛の力で
ねえ さがしてごらん
ほら 今僕がどこに
いるのか
見つめているよ
ひとりきりじゃないよ
いつでも僕がちかくに
ねえ いるよ
忘れたノートを涼風(すずかぜ)
めくってみたり
偶然ハートのエースを
ひきあてた時
僕の合図だよ
理由もないのに
勇気があふれてきたり
沈んだ夕暮れ細い雨がふったなら
僕の涙だよ
ねえ 励ましている
君 君をいつでも
とても深い愛の力で
もし 会えなくたって
もう 会えなくたって
平気さ
見つめているよ
ひとりきりじゃないよ
迷った時は
静かにシューズを照らしてあげる
愛しているよ
ひとりきりじゃないよ
いつでも僕がちかくに
ねえ いるよ
見つめているよ
ひとりきりじゃないよ
さびしい時は
テラスに星くず届けてあげる
愛しているよ
ひとりきりじゃないよ
いつでも僕がちかくに
ねえ いるよ
(作詞:康珍化/芹澤廣明:作曲
1990年12月)
80年代の思い出のアニメ
『タッチ』。
青春ラブコメ野球漫画?の
はしりだろう。
物語途中で双子の弟が
事故死してしまう。
残された双子の兄と
幼馴染のヒロインが
無き弟の夢であった
ヒロインを甲子園に
つれていく、という
夢をかなえるために
・・・という話。
(結構ざっくり略。)
その亡くなった弟が
ヒロインを
遠くで見守っているよ
という歌。
有名な主題歌「タッチ」の
歌詞が
「お願いタッチ タッチ
ここにタッチ あなたから
・・・」
というものだったので、
つい最近まで
ヒロインの心に「タッチ」
してよ!もうじれったい!
という話にそった
歌かと思っていた。
しかし、この冬に気が付いた。
それもあるけど
弟の夢、志なかばの夢を
兄のお前が受け継いでくれ、
お前にバトン「タッチ」したぞ。
お前たちを見守ってるから。
という意味もあったのだと
気が付いた。
生き残った者
残された者
からしか物語をみていなかった
自分に気がついた。
遠くにいってしまっても
大事な人は
意外と近くに
いるかもね、という
感覚を忘れず
おごらずに謙虚に
生きていきたい。
おわり。
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歌詞の掲載については、
利用許諾契約を締結しているUGCサービスリストの公表について
http://www.jasrac.or.jp/info/network/ugc.html
をご参照ください。当ブログのはライブドアブログですので
了承されたとみなします。
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