昨年の話で恐縮だが、
2015年6月28日(日)
於 すみだトリフォニーホール
第64回東西四大学合唱演奏会を
家族3人で鑑賞した。
私自身も久しぶりの
四連の鑑賞であった。
各団の人数も持ち直し、
安定多数(?)になり、
それぞれが
素晴らしいステージ
であった。
そして、メインの
合同ステージ。
多田武彦の新作である。
発売と同時にチケットを
3枚抑えた甲斐があった。
個人的感想であるが、
男声合唱を聴くときは
2階席の前の方か
1階席のセンターより
ちょいテナー寄り、
真ん中よりちょっと
後ろめの席が
好みである。
全席自由なら
開場1時間前に並ぶ。
指定席なら、
ダメ元で座席を指定。
乗りたい特急列車の
コツとノリは一緒である。
妻「そんなこといってると
チケット買えんぞ。」
それはさておき、
エール交換を
散々盛り上がって
楽しんでいた後、
行方不明になっていた
妻と娘が
席に戻ってきた。
父「どこいっとったんじゃ!
もう次は合同だぞ。」
娘「ちゃんとロビーで
観てたよ、モニターで。」
妻「このホールの北斎コーナー、
すごいね~!
北斎ゆかりの地マップ
もらっちゃった。
曳舟の水のほとりを~って
今はもう水路が無いんだ。
勉強になるなあ。」
父「君たちは
何しにここにきたのか
忘れてはいまいか。」
2人「タダタケはやく
聴きた~い!」
四連の皆様
大変申し訳ございません。
よく言っておきますから。
筆者が3人分ばっちりと
拝聴いたしましたので
ご勘弁を。
200人以上の鍛え抜かれた
若者の歌声による
達治ステージ。
最高に迫力があった。
流石四連。
なかでも、心に残った1曲。
「荒天薄暮(こうてんはくぼ)」
三好達治
天荒れて日暮れ
沖に扁舟を見ず
餘光散じ消え
かの姿貧しき燈臺に
淡紅の瞳かなしく點じたり
晩鴉波にひくく
みな聲なく飛び
あわただしく羽うちいそぐ
さは何に逐はるるものぞ
慘たる薄暮の遠景に
されどなほ塒あるものは
幸なるかな
天また昏く
雲また疾し
彼方町の家並は窓をとぢ
煤煙の風に飛ぶだになし
長橋むなしく架し
車馬影絶え
松並木遠く煙れり
――景や寂寞を極めたるかな
帆檣半ば折れ
舷赤く錆びたるは
何の船ならむ
錨重く河口に投じ
折ふりしにものうき
機關の叫びを放てり
まことにこれ戰ひやぶれし
國のはて
波浪突堤を沒し
飛沫しきりに白く揚れども
四邊に人語を聞かず
ただ離々として艸枯れて
砂にわななきわれひとり
ここに杖を揮ひ
悲歌し感傷をほしいままにす
(『故郷の花』
/創元社/1946年4月)
戦後、すぐに
刊行されたもので
『砂の砦』(「雪はふる」を収録)
とほぼ同時期の詩集より。
筆者が福井を訪れた昨秋、
三国の東尋坊はすっかり観光地に
なっていて、沢山の人で
にぎわっていた。
そこの広場に、どーんと
巨大な句碑が建てられている。
それが
この「荒天薄暮」 であった。
難しい言い回しではあるが、
「雪はふる」と合わせて
味わいたい「喪失感」を
感じる詩である。
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時間は戻り、
再びコンサート会場へ。
合同演奏と
アンコールステージで
異様に盛り上がり
拍手喝采している娘。
それが眼に入ったのか、
近くの席のおばあさま二人が、
「こんな小さい子にも
男声合唱の良さは届くのね、
まだまだ世の中捨てたものでは
ないわね」と
涙ぐんでいた。
調子がいいのは
誰に似たのか。
妻「まちがいなく、あんたじゃ。
娘もシルバーのペガサスで
サウスポーときてる。
血液型は不明だが、
証拠十分なり。」
2人「WHAT?」
妻「話を聞いとらんところが
瓜二つじゃあ!」
福井県立図書館の
三好達治コーナーの
目立つところに
この『達治と聲濤』の
譜面が蔵書として
飾ってあったぞ。
さすが福井県!
その後、この演奏会の
DVDを購入し、
家族みんなで
楽しんでいるのである。
おわり。
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