「雨」
  八木重吉

雨のおとがきこえる
雨がふっていたのだ

あのおとのように
そっと
世のためにはたらいていよう

雨があがるように
しずかに死んでゆこう

(『日本の詩 八木重吉』
ほるぷ出版/1975年2月)

この本に
まとまった形で
「秋の瞳」はじめ八木重吉の
詩が収められている。



今回、改めて眼を通してみる。
すると、気が付いたことがある。
「雨」という詩が6個も
書かれている、
ということだ。
他にも「春」「秋」などが
目立つが、「雨」ほどではない。
ほかにも重大な気づきがあったが
後述する。


第1部
八木重吉は、解説する
までもないが
男声合唱界では超有名人。
なぜかというと、
多田武彦男声合唱組曲集4集の
『雨』の第6曲であるから。

筆者もかれこれ100回は
愛唱している。

この詩人は1954年
10月26日4:30没。
享年29歳。
結核に侵され、
長い闘病生活の果てに
天に召される際には、
愛する妻の名前を叫んだと
いう。

短い人生の中でも
成し遂げた
素晴らしい詩が
残されている。


第2部
八木重吉について、
あれこれ語る資格はないが、
このことはよく
解説されている点。

☆敬虔なキリスト教徒。
☆結核に3年あまり苦しむ。
 晩年はほとんど病臥の
 中にあった。
☆作家活動は5年ほど。


第3部

今回調べていて
気が付いた点。

☆日本古典文学のしきたり。
 掛詞で
「雨(あめ)」と
「天(あめ)」

「降る(ふる)」と
「経る(ふる)」。


☆黒人霊歌の有名な歌。
「Go tell it on the mountain」
 にみる大切なことを
 高みからひろく
 伝えようという
 宗教的精神。

☆八木重吉が残したもの。
 様々な「雨」の形を
 繰り返し発語することにより
 何かを達成したいと願う
 宗教的精神。


これらをあらためて
意識して「雨」を
読んでみると、
また違った風景が
みえてこないだろうか。


第4部
あめのおと「雨」の詩を
読む際に参考にしたい
八木重吉の詩を
いくつか紹介したい。


「春」


朝眼めを醒さまして
自分のからだの弱いこと
妻のこと子供達の行末
のことをかんがえ
ぼろぼろ涙が出て
とまらなかった


「雨の日」

雨が すきか
わたしはすきだ
うたを うたおう


「天」

天というのは
あたまのうえの
みえる あれだ
神さまが
おいでなさるなら
あすこだ
ほかにはいない

============

若くして亡くなる詩人は
神々にその才能を
愛されるからというが、
何とも言葉がない。


私達後世の人間に
できることとして、
先人の想いを受け止める。
いろんなまなざしで
詩人をみることに
意義があるのでは
ないだろうか。

=============
立派であるまえに
なりふりかまわず
優しい人でありたい。

『春、戻る』瀬尾まいこ
(集英社/2014年)より
=============

まだまだ
未読の詩が私をまっている。
さあ、今日も
多田武彦の曲にのせて
近代詩を読む
無限の旅に出ようか。


おわり。

参考文献
『八木重吉詩集』
(白凰社/1969年9月発行)
『日本の詩 八木重吉』
(ほるぷ出版/1975年2月)


にほんブログ村 音楽ブログへ
にほんブログ村