いつもお世話になっています
多田武彦データべース

によると、

作曲順に
『雪と花火』(北原白秋)1957年
『雪明りの路』(伊藤整)1960年
『東京景物詩』(北原白秋)1991年

となっている。
今日はそれを踏まえた物語。

筆者は、
『雪明りの路』を20代前半
『東京景物詩』を20代半ばと30代後半
にその当時の所属していた
男声合唱団で
歌ったことがある。


男声合唱組曲『東京景物詩』

1「あらせいとう」
2「カステラ」
3「八月のあいびき」
4「初秋の夜」
5「冬の夜の物語」
6「夜ふる雪」

印象的なのは、

とても有名なこの曲。


「冬の夜の物語」
   北原白秋

女はやはらかにうちうなづき、
男の物語のかたはしをだに
聴き逃さじとするに似たり。
外面にはふる雪のなにごともなく、
水仙のパツチリとして匂へるに
薄荷酒青く揺らげり。
男は世にもまめやかに、
心やさしくて、
かなしき女の身の上に
なにくれとなき温情を
寄するに似たり。
すべて、みな、ひとときの
いつはりとは知れど、
互みになつかしくよりそひて、
ふる雪の
幽かなるけはひにも涙ぐむ。

女はやはらかにうちうなづき、
湯沸のおもひを傾けて
熱き熱き珈琲を掻きたつれば、
男はまた手をのべて
そを受けんとす。
あたたかき暖炉はしばし
息をひそめ、
ふる雪のつかれはほのかにも
雨をさそひぬ。

遠き遠き漏電と夜の月光。
(『東京景物詩及其他』/東雲堂書店/1913年)


作曲者は、この曲の中に
『雪明りの路』を経験した
からこそのメロディーが
こめられていると感じた。


以下、色は違うところが
筆者の妄想。


外面には降る雪の・・・
でのテナーの余韻。

視線は窓へ。
雪道を歩いてきて
この家を覗いていて居る
青年がいるかも。
気のせいか。

降る雪の何事もなく・・・

で視線がまた男女に戻る。


水仙のパッチリとして
匂へるに・・・


外に夜どほし立ってゐる
桐の木の花が
甘く鋭く匂ってゐる
と風景が重なる。


薄荷酒青く揺らげり・・・

しづかな青い雪明りだよ。

これ以降、覗かれていないと
安心した男女は
お互いの気持ちを
くみかわす。


遠き遠き漏電と夜の月光。

遠くでスパークするのが
たびたび見えるのが、
東京にあちこち走っていた
市電のパンタグラフの
閃光だよね。とは
当時東京景物詩を指導して
頂いたH先生の弁。

思い出しました。


おお、そうでしたか。
20代半ばの
まだ愛のなんたるかを知らぬ
若者は人生のマスターである
H先生のお言葉に涙したのでした。


詩が書かれた順番は
決まっている。
しかし、作曲される順番は
決まっていない。

いろいろな変遷があって
作曲があるので、
いろいろ想像(妄想)しながら
歌を楽しむのも
また合唱の楽しみ。


ちなみに、
『雪明りの路』
『東京景物詩』
ときたので、
「白秋のひとつの旅」
のくぎりとして
『雪と花火』
いつかは
歌ってみたいものである。


おわり。

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