三好達治「わがふるき日のうた」に
登場する「木兎(みみずく)」。

同じモチーフながら
詩人の個性がでる
印象的な2つの
詩を味わいました。

「木兎」
   三好達治
木兎が鳴いてゐる
ああまた木兎が鳴いてゐる
古い歌
聽き慣れた昔の歌
お前の歌を聽くために
私は都にかへつてきたのか……
さうだ
私はいま私の心にさう答へる

十年の月日がたった
その間に 私は何をしてきたか
私のしてきたことといへば
さて何だらう……
一つ一つ 私は希望をうしなつた
ただそれだけ

木兎が鳴いてゐる
ああまた木兎が鳴いてゐる
昔の聲で
昔の歌を歌つてゐる

それでは私も お前の眞似をするとしよう
すこしばかり歳をとつた この木兎もさ
(詩集『一點鐘』/1941年/創元社)
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「帰郷」
   中原中也
 柱も庭も乾いてゐる
今日は好い天気だ
    縁の下では蜘蛛の巣が
    心細さうに揺れてゐる
山では枯木も息を吐く
 あゝ今日は好い天気だ
    路傍の草影が
    あどけない愁みをする
 これが私の故里だ
 さやかに風も吹いてゐる
    心置なく泣かれよと
    年増婦の低い声もする
 あゝ おまへはなにをして来たのだと……
吹き来る風が私に云ふ
(『山羊の歌』/ 文圃堂/ 1934年)
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・・・・同じ振り返りでも
三好達治の「木兎」とは
だいぶ違う。
しんどい中でも、
山口という帰る故郷があった
中原中也と、
ほぼ一家離散、
父親失踪という環境で、
帰る故郷は
幻の中にしかなかった
三好達治の感性が
それぞれの詩に表れているようで
なかなか面白いです。

おわり。

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