人に歴史あり。音楽に譜面あり。合唱に歌詩あり。
男声合唱、特に多田武彦をこよなく愛するものによるブログです。
多田武彦(1930年‐2017年)は日本の作曲家で、男声合唱を中心として113もの組曲を世に生み出した作曲家です。
その作品は日本の近代詩を中心とした叙情的なアカペラが多く、歌いこんでいるうちに、近代詩への興味が深まってきました。
そこで本ブログでは、合唱曲に取り上げられた詩についていろいろ感じたままに書きつらねます。たまに脱線しますが基本的に歴史と音楽と文学の話です。
なお、筆者は人生ハードモードにつき、躁うつ病とメニエール病とのたたかいの真っ最中でもあります。その闘病記も書くことがあります。歩みはゆっくりと。

毎度お世話になっております多田武彦〔タダタケ〕データベース のHPによると、男声合唱組曲『父のいる庭』の2曲目「太郎」は、津村信夫が子どもを授かった時の詩だが、生まれた子は女児だったという背景があったとのこと。この組曲は、家族に関する胸がほっこりとするエピソ ...

先週から始まった怒涛の北海道出張まつりも三往復目。オホーツク海沿岸の稚内よりのとある街のホテルで闇に寝しづまっている家々を眺めながらこのブログを書いている。妻「遠征で疲れてんだから、早よ寝んか!」娘「インフルB型にかかってしんどいよ~。」父「・・・空耳ア● ...

こつこつと書き溜めてきた拙ブログではあるが、当然のことながら、多田武彦が作曲した詩人は全て網羅できているわけではない。(拙ブログの参考記事)多田武彦が作曲した詩人たちをざっくり知るためにhttp://blog.livedoor.jp/hirolead/archives/47511292.html色々な条件があ ...

演奏会も無事終了し、ほっとひと息。昨年9月から住み始めた新しい街で、忘れていたわ、本屋巡りの旅。それも古書店がイイ。妻とぶらぶら歩き中に、突然、街中のメインストリートに古き良き古書店が出現。父「なにかあるぞ。」妻「見て、壁一面に北原白秋全集があるぞ。」父「 ...

「渡り鳥」   北原白秋あの影は渡り鳥、あの耀きは雪、遠ければ遠いほど空は青うて、高ければ高いほど脈立つ山よ、ああ、乗鞍嶽、あの影は渡り鳥。(『水墨集』/アルス/1923年)先日のタダタケをうたう会の演奏会でのタダタケ・ア・ラカルトステージで演奏する機会に恵ま ...

「海は、お天気の日には」   中原中也海は、お天気の日には 海は、お天気の日には、綺麗だ。海は、お天気の日には、金や銀だ。それなのに、雨の降る日は、海は、怖い。海は、雨の降る日は、呑まれるやうに、怖い。ああ私の心にも雨の日と、お天気の日と、その両方がある ...

「冬の明け方」   中原中也殘んの雪が瓦に少なく固く枯木の小枝が鹿のやうに睡い、冬の朝の六時私の頭も睡い。烏が啼いて通る――庭の地面も鹿のやうに睡い。――林が逃げた農家が逃げた、空は悲しい衰弱。   私の心は悲しい……やがて薄日が射し青空が開く。上の上の ...

「水路」   北原白秋 ほうつほうつと蛍が飛ぶ……しとやかな柳河の水路を、定紋つけた古い提灯が、ぼんやりと、その舟の芝居もどりの家族を眠らす。ほうつほうつと蛍が飛ぶ……あるかない月の夜に鳴く虫のこゑ、向ひあつた白壁の薄あかりに、何かしら燐のやうなおそれが ...

何度もくじけそうになって、ゲネプロと本番の2日間を空けるために直前の2週間で何日も徹夜して仕事を終わらせてふらふらになって我にかえって会場にたどり着いた。男声合唱団タダタケを歌う会コンサート第陸。20180121。於 石橋メモリアルホール。 沢山の方にご来場いただ ...

1月21日(日)に迫っている当団のコンサート。年末に敢行した自宅単独音確認合宿のおかげで、一筋の光がみえてきた気がする。詳しくは、拙ブログ記事を。 演奏する2つの組曲のうちの多田武彦作曲『優しき歌』は全5曲。どれもみなわが胸をうつ音楽に溢れている。・・・しかし ...

2017年もいよいよ大詰めである。「寒い夜の自画像」   中原中也きらびやかでもないけれどこの一本の手綱をはなさずこの陰暗の地域を過ぎる!その志明らかなれば冬の夜を我は嘆かず人々の焦燥のみの愁しみや憧れに引き廻される女等の鼻唄をわが瑣細なる罰と感じそが、わが ...

いよいよ、である。2018年1月21日(日)14:30開演。於 石橋メモリアルホール(JR上野駅)詳しくはこちらを。男声合唱団タダタケを歌う会http://tadatake.halfmoon.jp/フライヤーはこちらを。指導者陣が、音楽監督の髙坂徹先生。アンサンブルリーダー(EL)が小池由幸さん ...

さて、秋である。芸術の秋である。月の横にアルデバランが観測できた秋である。実に、秋である。筆者も一年ぶりにオンステするさせていただきます。あの東京男声合唱フェスティバルです。所属はもちろん男声合唱団タダタケを歌う会であります。しかも、伊藤整と立原道造。ど ...

『ソネット集』については拙ブログでも取り上げたことがあります。男声合唱団タダタケを歌う会のコンサート「第伍」のこと 多田武彦の立原道造『ソネット集』を男声合唱団タダタケを歌う会で髙坂先生の情熱溢れる棒で歌うという僥倖に恵まれたので、続きの『ソネット集・第二 ...

眠れぬ夜にツィッターでつらつら書いたネタのまとめその拾参。随時追加予定。だが時期未定。でも断固追加予定。#21 そろそろソロいってみナイト。多田武彦の組曲を歌っていて、誰しもが「いつかは・・・」と夢見ることを実現できるイベントを仕掛けないと。お店にお客を呼 ...

読み疲れた時に、ほっと一息の時間。妻「アンタの曲集についての  歴史はわかった。  じゃあ、よく鼻歌で歌っている曲、  アンコールについては  どうなん?」父「・・・鋭いナ。」筆者のタダタケライフは意外と短い。(全曲オンステしたものに限定だけど)1995-201 ...

読み疲れた時に、ほっと一息の時間。妻「あんた、多田武彦の詩と歌について  いろいろ妄想してるけど、  そこまでいうなら(書くなら)  沢山経験してんだろうね。」父「・・・鋭いナ。」筆者のタダタケライフは意外と短い。(全曲オンステしたものに限定だけど)1995 ...

多田武彦作曲の伊藤整(『雪明りの路』/椎の木社/1926年)の詩集による『雪明りの路』は名組曲の誉れ高いといっても過言ではないだろう。多田武彦の詩の選球眼(選詩眼?)の素晴らしさにはただただ感服するしかないが(下記拙ブログのリンク参照)。多田武彦が作曲した詩人 ...

「かへる日もなき」   三好達治かへる日もなきいにしへをこはつゆ艸の花のいろはるかなるものみな青し海の青はた空の青(『花筐』青磁社/1944年)多田武彦作曲『わがふるき日のうた』の中の終曲「雪はふる」の2年前の風景。「雪はふる」   三好達治海にもゆかな野にゆ ...

思えばセカンドテナー地位向上委員会が発足してから早1年と2か月余り。日本全国から沸々と湧き上がるセカンドテナー賛歌!?・・・という訳にはすんなりいかないようである。それもまた真実なり。そうだ、所属する男声合唱団の演奏会の活性化のアイディアを出すことによって ...

立原道造『優しき歌』の曲集で取り上げるいよいよ最後の1曲である。「落葉林で」   立原道造 あのやうにあの雲が 赤く光のなかで死に絶へて行つた私は 身を凭せているおまへは だまつて 脊を向けてゐるごらん かへりおくれた鳥が一羽 低く飛んでゐる私らに 一日が ...

「さびしき野辺」   立原道造いま だれかが 私に花の名を ささやいて行つた私の耳に 風が それを告げた追憶の日のやうにいま だれかが しづかに身をおこす 私のそばにもつれ飛ぶ ちひさい蝶らに手をさしのべるやうにああ しかし となぜ私は いふのだらうその ...

父「この曲集は  1曲目『村』、2曲目『村』と  同じ題名の詩が続くんだよ、  面白いねえ、三好達治は。」妻「で、今回はどっちよ。」1曲目の『村』である。2曲目の『村』については拙ブログで取り上げたことがある。三好達治『追憶の窓』の中の「村」のことhttp://blog ...

「志おとろへし日は」   三好達治こころざしおとろへし日はいかにせましな手にふるき筆をとりもちあたらしき紙をくりのべとほき日のうたのひとふし情感のうせしなきがらしたためつかつは誦しつかかる日の日のくるるまでこころざしおとろへし日はいかにせましな冬の日の黄 ...

絶望の叫喚に叫ぶとき、 私の悩みは誰も知るまいと白い月にほほえんでみたくなるとき、遠き遠き漏電と夜の絶叫。など人生、へこんでいるときは頭の中でテクストが大混乱のワルツを踊ってゐる。 だからこそ時には己のルーツに立ち戻りたくなる、そんな瞬間が誰しもあるので ...

人はみな旅人である。 気持ちが折れそうなとき、 真夜中に叫びだしそうなとき、 己のルーツに立ち戻りたくなる、そんな瞬間が誰しもあるのではないだろうか。 筆者の場合、 そのルーツを思い出させるものたち。それは東京は上野の 東京文化会館にある。 拙ブログで取り上げ ...

「みまかれる美しきひとに」   立原道造まなかひに幾たびか立ちもとほつたかげはうつし世に まぼろしとなつて忘れられた見知らぬ土地に 林檎の花のにほふ頃見おぼえのない とほい星夜の星空の下で、その空に夏と春の交代が慌しくはなかつたか。――嘗てあなたのほほゑ ...

眠れぬ夜にツイッターでつらつら書いたネタのまとめその拾弐。随時追加予定。だが時期未定。でも断固追加予定。#20新入団員獲得はかくも困難な・・・。新年度も始まり、新入社員も周囲に配属され、新入生も学校に集まり、歓送迎会なども毎晩毎晩催されていることだらう。 ...

読み疲れた時に、 ほっと一息の時間。倒れちゃうときは前ノメリ。という古の三河武士のような合唱ライフを送っている筆者も、人間だもの。楽譜と詩集と始終にらめっこぢゃ疲れちゃう。そこで、少し肩の力をぬくときも必要かと。そんなときにぴったりの合唱に関する小説と漫画 ...

もうすでに二本のネタを書いてしまつた。セカンドの知られざる「ぐっとくる」旋律のことhttp://blog.livedoor.jp/hirolead/archives/46956229.htmlセカンドの知られざる「ぐっとくる」旋律のことその弐http://blog.livedoor.jp/hirolead/archives/49898812.htmlあまりのニッ ...

念を押すわけではないが筆者のパートはセカンドである。特に多田武彦の曲は、セカンドやっててよかった~感がえげつないのである。一度拙ブログでも取り上げたことがある。セカンドの知られざる「ぐっとくる」旋律のこと。http://blog.livedoor.jp/hirolead/archives/4695622 ...

筆者は、北方民族大移動を無事に終えて、絶賛荷物整理中である。さて、まずは新しい土地の情報を入手しに図書館へGO!妻「まだ、家の中が全然  片付いておらんぞ!」新しい図書館はやはり興奮するのである。そしてまた、新たな出会いが。日本最大の図書館検索「カーリル ...

知人の出演するコンサートで三好達治『達治と濤聲』を鑑賞する機会を得た。筆者は初演を生で聴いて感動したものの一人であったが。==================第64回東西四大学合唱連盟合唱演奏会於 すみだトリフォニーホール)合同ステージ(指揮:山脇卓也氏) ...

「また落葉林で」   立原道造いつの間に もう秋! 昨日は夏だつた……おだやかな陽氣な陽ざしが 林のなかに ざわめいてゐるひとところ 草の葉のゆれるあたりにおまへが私のところからかえつて行つたときにあのあたりには うすい紫の花が咲いていたそしていま おま ...

いろいろ訳あって苦労も分けあって筆者は北方民族大移動の真っ最中。こそこそ荷物を現住所から車で1時間ほどの距離にある新住所に運び込んでいるのである。ああ、最近多田武彦を歌ってないなあ。いかんなあ、これでは。忙中閑あり。歌えなくてもCDなどは隙を見て聴いている ...

反論ばかりじゃありません。「セカンドテナー地位向上委員会」へのまるっとした賛美もあります。全国から湧き上がるて~んの濁音。父「で~ん!!」※個人の感想です。※地位の捉え方には個人差があります。※諸説あります。妻「いいかげん、話を進めんか!」誤解派byBARI「 ...

ふと手に取った詩専門の雑誌がある。『現代詩手帖』2014年10月号。偶然目に留まったのが特集「立原道造-生誕百年」である。最近、多田武彦&立原道造に縁があるなあと。その中で特に印象に残ったのがこの「立原道造の詩と空間」小池昌代氏の文章である。要点は次の通り。● ...

 一部地域と一部声部の方々に ひそかに話題となった 「セカンドテナー地位向上委員会」。そのささやかな反響に溢れる涙がほおに筋を引いたとて。※個人の感想です。 ※地位の捉え方には個人差があります。 ※平成28年5月5日時点での地位です。 妻「いいかげん、話を進めん ...

三好達治についての本を探していたら、次の本にたどり着いた。『三好達治』(1979年/筑摩書房)正確に言うとこういう本がある、という情報でしたが(笑)今まで数々のお世話になっている日本最大の図書館検索カーリル でさえも検索不可能とは、どんだけか~!と半ばあきらめ ...

妻「おーい、この汚い段ボール、    押入れの中にあったけど、       処分するぞー!」夫「ちょっと待った!!何かあるぞ。」拙ブログの記事伊藤整『雪明りの路』にまつわる風景のこと を執筆した際に、もう失くしたと思ってあきらめていた写真群が我が家の押入れから ...

1999年12月末。世の中がY2K問題で異様に盛り上がっていたあの季節。1994年10月に男声合唱の初ステージで多田武彦『雪明りの路』を歌う機会に恵まれ、すっかりこの詩人と作曲家にハマってしまった筆者。演奏会には間に合わなかったが、ひそかに、冬の小樽近辺を歩いてやろうと ...

新年です。本ブログ執筆を本格的に再開して初めての初春。新年早々恐れ多くも多田武彦作曲北原白秋『雪と花火』より終曲「花火」である。「花火」   北原白秋 花火があがる、銀と緑の孔雀玉……パツとしだれてちりかかる。紺青の夜の薄あかり、ほんにゆかしい歌麿の舟の ...

さて、若き詩人立原道造である。組曲1曲目の「爽やかな五月に」。筆者は高校、大学と混声でのびのびと育まれたので(笑)どうしても小林秀雄の曲を思い出してしまうが。ここでの話題は男声合唱の多田武彦版でよろしくお願いします。勿論どちらも、それぞれの良さがありどちら ...

読み疲れた時に、ほっと一息の時間。我が娘の小学校生活も残り3か月となった。親としては、感慨深いものがある。幸いにもまだ良好なコミュニケーションがとれている。タダタケつながりで。ある日の風景その1。父娘2人で、お昼をどこで食べるか相談中。父「じゃあ、そばでも ...

「紺屋のおろく」    北原白秋 にくいあん畜生は紺屋のおろく、猫を擁えて夕日の浜を知らぬ顏して、しやなしやなと。にくいあん畜生は筑前しぼり、華奢な指さき濃青に染めて、金の指輪もちらちらと。にくいあん畜生が薄情な眼つき、黒の前掛、毛繻子か、セルか、博多帯 ...

おお、つひに私もこの歌と交わるときが来たのだ。まだ筆者が青年時代、この組曲の演奏を当時のガールフレンドと座って眺めてゐたつけが・・・。今は死語か、「タダタケデデート」(笑)その彼女も多田武彦が大好きだったのよ。もう時効だから、許して、と。妻「フォローにな ...

冬も本格的になってきた冬が似合う詩人というか冬に味わいたい詩人といえばやはり中原中也か。人生の曲り角、お肌の曲がり角には叫びだしたくなる夜があるノオ、ノオ、ノオ・・・と少し福永武彦のようになってしまったが、私の人生に座る椅子なんてないのだ。中原中也の詩を ...

久しぶりである。伊藤整『雪明りの路』である。どうやら3回目の全曲演奏の機会に恵まれそうである。筆者が初めて本格的な男声合唱の組曲に取り組んだのは『雪明りの路』である。以下、拙ブログの記事。男声合唱そして多田武彦作品との初めての邂逅 歌詞は大人の事情により、 ...

『万葉の人びと』犬養孝(新潮文庫/1981年)誰もが知っている万葉集の歌についてわかりやすく、解説したNHKの放送の原稿をもとにした本。おお、そんな風景や情が隠れていたのか。と目から鱗の本であった。で、再度まっさらな気持ちでよみなおしてみる。「雪はふる」    ...

「雲の祭日」   立原道造羊の雲の過ぎるとき蒸氣の雲が飛ぶ毎に空よ おまえの散らすのは白い しイろい絮(わた)の列 帆の雲とオルガンの雲 椅子の雲きえぎえに浮いてゐるのは刷毛の雲空の雲……雲の空よ 青空よひねもすしイろい波の群 ささへもなしに 薔薇紅色に ...

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